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登山靴の手入れは、山へ行った日の続きだと思う

登山靴の手入れ。

そう聞くと、少し面倒に感じる人もいるのではないでしょうか。

私も、正直に言えばそうです。

山から帰ってきて、疲れている。

ザックを下ろす。

ウェアを脱ぐ。

写真を整理したい。

温泉にも入りたい。

できれば、そのまま全部片付けてしまいたい。

そんなときに登山靴を見て、

「……今日はいいかな」

となる。

あります。

かなりあります。

でも、登山靴を眺めていると、少し考え方が変わってきます。

泥が付いている。

細かい砂が入り込んでいる。

靴底には土が詰まっている。

靴紐も汚れている。

よく見ると、山を歩いた跡がそのまま残っています。

それを見ていると、

「これ、ちゃんときれいにしてあげた方がいいよな」

と思うのです。

登山靴は、山へ連れて行ってくれる道具です。

だったら、山から帰ってきたあとくらい、少し手をかけてもいい。

そんな気持ちで、私は登山靴の手入れをしています。

登山靴は意外と汚れている

山を歩いているときには、あまり気になりません。

歩くことに夢中になっていますし、靴は足元にあります。

ところが家へ帰ってから見ると、

「こんなに汚れていたのか」

と思うことがあります。

泥。

砂。

小石。

草。

葉っぱ。

雨の日なら水分も残っています。

特に登山靴のソールを見ると、かなりいろいろなものが付いています。

山の中では普通に歩いているだけなのに、その足元には歩いてきた道の跡が残っている。

そう考えると、ちょっと面白いものです。

泥の色を見るだけでも、

「今回は土の道が多かったな」

とか、

「この辺りで雨が降ったな」

とか、なんとなく山行を思い出します。

靴が登山の記録になっている。

そう考えると、手入れする時間も少し楽しくなります。

まずは泥を落とす

登山靴の手入れで、最初にしたいのは汚れを落とすことです。

ここで大切なのは、いきなりゴシゴシ洗わないこと。

靴に付いた泥が乾いているなら、まず乾いた状態で落とせるものを落とします。

ブラシなどを使って、表面の泥や砂を取り除いていきます。

靴底も忘れてはいけません。

ソールの溝に土が詰まっていることがあります。

細かい石が挟まっていることもあります。

これをそのままにしておくと、次に履くときまで残ってしまいます。

私は靴底を見ると、

「こんなところに石が入っていたのか」

と驚くことがあります。

山では気付かないんですよね。

歩いているときは、それほど気にならない。

でも帰宅して靴をひっくり返してみると、いろいろなものが出てきます。

靴紐も外してみる

登山靴の手入れをするなら、靴紐も一度外してしまった方がいいと思います。

靴紐が付いたままだと、その下がどうしても掃除しにくい。

金具の周辺にも汚れが溜まります。

普段はあまり見ない場所です。

だからこそ、靴紐を外したときに、

「こんなところまで汚れているのか」

となります。

靴紐自体も汚れていたら洗う。

それだけでも、靴全体が少しきれいになります。

靴紐を外す作業はちょっと面倒ですが、ここまでやると「ちゃんと手入れしている感」が出てきます。

私はこういうところで少し嬉しくなります。

単純です。

水洗いするときは慎重に

汚れがひどい場合には、水を使って洗うことになります。

ただし、登山靴なら何でも水でジャブジャブ洗えばいい、というわけではありません。

素材によって手入れ方法が違います。

革なのか。

合成素材なのか。

防水透湿素材を使っているのか。

メーカーによっても推奨される方法が異なります。

ここは、面倒でも説明書やメーカーの案内を確認した方がいいところです。

「登山靴なんだから丈夫だろう」

と、私はつい思ってしまいます。

でも、靴にとっては山の泥も雨も、かなりの負担なのかもしれません。

だから、優しく扱う。

これが大切だと思います。

洗剤なら何でもいいわけではない

これも意外と重要です。

汚れが落ちるなら普通の洗剤でいいのではないか。

最初はそう思ってしまいます。

でも、登山靴には素材があります。

表面の素材や防水性などを考えると、何でも使えばいいというものではありません。

専用のクリーナーが用意されている場合は、それを使う方が安心です。

特に革靴などは、汚れを落とすだけではなく、その後の保革まで考える必要があります。

ここまで来ると、

「登山靴って結構繊細なんだな」

と思います。

山ではあんなに荒っぽい場所を歩いているのに、家に帰ると急に丁寧に扱わなければいけない。

なんだか不思議です。

でも、それだけ大切な道具なのだと思います。

いちばん大切なのは乾燥かもしれない

登山靴の手入れで、私が特に気を付けたいと思っているのが乾燥です。

山で雨に降られた。

沢を歩いた。

雪の上を歩いた。

あるいは汗をたくさんかいた。

登山靴の中には水分が残ります。

表面が乾いているように見えても、中は湿っていることがあります。

ここで焦って乾かそうとして、強い熱を当てるのは避けたいところです。

ドライヤーの熱風を近距離から当てたり、ストーブのすぐそばに置いたりするのは、靴の素材を傷める原因になることがあります。

ではどうするか。

基本は、風通しの良い場所で自然に乾かす。

これが地味ですが大切です。

靴の中に新聞紙などを入れて水分を吸わせる方法もありますが、これも素材や靴の状態を見ながら行いたいところです。

とにかく、

急がない。

これが私には難しい。

早く乾かして片付けたい。

でも登山靴からすれば、

「そんなに急がなくてもいいですよ」

と言っているのかもしれません。

インソールも忘れない

意外と忘れがちなのがインソールです。

靴の中に入っているので、外からは見えません。

でも、足の汗を一番近くで受け止めている場所です。

登山が終わったら、インソールを取り出して乾かす。

これだけでも靴の中の環境は変わります。

インソールを外した状態で靴の内部を確認すると、

「ここまで湿っていたのか」

と分かることもあります。

私は登山靴の中を見るとき、ちょっと不思議な気持ちになります。

山では何時間も自分の足を守ってくれていた。

その結果として、靴の中には汗や湿気が残っている。

考えてみれば当然です。

だから、そこもちゃんと休ませる。

登山靴も人間と同じで、山から帰ったら休養が必要なのだと思います。

防水性能は「ずっと続く」ものではない

登山靴を買ったばかりの頃は、雨が降っても水を弾いてくれます。

それが嬉しい。

水滴が靴の表面でコロコロ転がっていく。

「すごいな」

と思います。

ところが、何度も山へ行っていると、少しずつ変わってきます。

以前ほど水を弾かなくなってくる。

素材や使用状況によっても違いますが、防水性や撥水性は使っているうちに変化します。

だから、必要に応じて適切な防水・撥水ケアをする。

ここもメーカーの説明に従うことが大切です。

防水スプレーなども、素材によって適したものがあります。

「とりあえず吹けばいい」

ではなく、

「この靴には何が合うのか」

を確認する。

登山靴を長く使いたいなら、ここは覚えておきたいところです。

靴底もたまには見ておきたい

登山靴のソールは、山を歩けば当然すり減ります。

私は登山の準備をするとき、靴底を見ることがあります。

溝はまだしっかり残っているか。

極端にすり減っていないか。

剥がれなどがないか。

登山靴の手入れというと、表面をきれいにすることばかり考えます。

でも、本当に重要なのは足元です。

靴底は地面と接する場所。

そこがどうなっているかは、きちんと確認しておきたい。

特に久しぶりに履く登山靴なら、出発前に一度じっくり見ておきたいと思います。

前回の山行から時間が経っていると、見た目では分からない変化があるかもしれません。

山へ行ってから、

「しまった」

となるのは避けたいですから。

登山靴を手入れすると、山を思い出す

登山靴を洗っていると、少しだけ山を思い出します。

この泥はどこで付いたんだろう。

この傷はどこでできたんだろう。

この石はどこから入ってきたんだろう。

そうやって靴を眺めていると、その日の山行が少しずつ戻ってきます。

急な坂。

ぬかるんだ道。

岩の上。

落ち葉。

雨。

長い下り。

そして、山頂。

登山靴はずっと足元にいたのですから、当然といえば当然です。

だから私は、登山靴の手入れを「片付け」とだけ考えないようにしたいと思っています。

山から帰ってきたあとに、その山をもう一度思い出す時間。

そう考えると、少し楽しくなります。

次の山へ行く準備でもある

そして、手入れが終わった登山靴を見ていると、今度は次の山のことを考えてしまいます。

「次はどこへ行こう」

まだ予定もないのに、靴だけは準備できている。

きれいになった靴を玄関に置く。

すると、

「次の山、まだ決まっていないんだけどな」

と思いながら、地図を開いてしまう。

これが困ります。

登山靴を手入れしただけなのに、次の登山計画が始まってしまう。

でも、それでいいのだと思います。

登山靴は山へ行くための道具です。

きれいにして、乾かして、状態を確認しておく。

それだけで、

「いつでも行ける」

という気持ちになります。

もちろん、実際には天気も確認しなければいけませんし、装備も準備しなければいけません。

でも、玄関にきれいな登山靴があるだけで、山が少し近くなります。

登山靴は、足を守ってくれる道具

登山靴の手入れについて書いてきましたが、結局のところ、一番大切なのはこれだと思います。

登山靴は、ただの靴ではありません。

石の多い道を歩く。

濡れた道を歩く。

長い距離を歩く。

上り坂を歩く。

下り坂を歩く。

その間ずっと、自分の足を守ってくれています。

私たちは山に夢中になっているので、靴のことを忘れてしまいます。

「今日は良い景色だった」

「山頂が最高だった」

「紅葉がきれいだった」

そんなことばかり考えています。

でも、その間ずっと足元には登山靴がいる。

そう考えると、帰宅したあとくらいは、

「お疲れさま」

と言いたくなります。

……ちょっと大げさでしょうか。

でも私は、そんな気持ちで手入れをしています。

次の山でも、よろしくお願いします

登山靴の手入れは、特別難しいことをしなければならないわけではありません。

まず汚れを落とす。

必要なら適切な方法で洗う。

インソールを外す。

しっかり乾かす。

素材に合ったケアをする。

靴底や靴全体の状態を確認する。

そして、風通しの良い場所で保管する。

もちろん、靴によって適切な方法は違います。

だから、最後はその登山靴のメーカーや取扱説明書を確認するのが一番です。

でも、その作業そのものを面倒な「後片付け」と考えるのではなく、

山から帰ってきたあとの最後の登山時間

くらいに考えてみてもいいのではないでしょうか。

靴に付いた泥を落としながら、その日の山を思い出す。

傷を見ながら、どこを歩いたのか思い出す。

乾いていく靴を眺めながら、次の山を考える。

そして最後に、玄関に登山靴を置く。

「次はどこへ行こうかな」

と考える。

これで終わりです。

いや。

終わりではないですね。

次の登山の始まりです。

登山靴をきれいにしておけば、次に山へ行くときも気持ちよく履くことができます。

何より、山で自分の足を支えてくれる大切な道具です。

だから、帰ってきたら少しだけ手をかけてあげたい。

「今日もありがとう」

そして、

「次の山でも、よろしくお願いします」

そんな気持ちで登山靴を磨いています。